アメリカ・ワシントン州の地下鉄受注のドラマ

先ず、川重は「ニューヨーク州」と「ネブラスカ州」に鉄道車両工場を有しており、ニューヨーク地下鉄に1982年の初受注以来これまでに2200両を超える車両を納入しており、現在のワシントン地下鉄では過半数を占める主力車両になっている。

更に、新型車両「R211」535両の受注を獲得し、2023年にかけて納入する予定だが、「R211」は追加で最大1077両を製造するオプションがあり、オプションが行使された場合は生産総数1612両、受注総額は37億ドル(約4100億円)で、川重にとっては過去最大規模の鉄道車両受注案件で、オプションの製造は2025年まで継続する。

今回のワシントン地下鉄8000系入札を、川重は新たな新工場を造ってでも新規受注を狙うべきか、メリット、デメリットを勘案すると、川重は入札に参加しない、あるいは入札に参加したとしても積極的になれなかった理由がある。

一方で、8000系の受注獲得に意欲を見せたのは中国車両メーカーの中国中車で、低価格を武器に世界各国での受注をじわじわと増やして、世界にPRしたい中国中車にとってワシントン地下鉄8000系は喉から手が出るほど獲得したい案件だったが、『中国製の鉄道車両に搭載されたカメラや位置情報の追跡機器によって、鉄道車両内の情報が中国側に監視される可能性がある』と、米議会で指摘され、2019年12月に成立した国防権限法(アメリカの国防予算を決めるために議会が毎年通す法律)には、政府予算による中国製鉄道車両やバスの購入を禁止する条項が盛り込まれ、これにより中国中車に発注する可能性は消えた。

現在の川重製車両

上述事情から、今回のワシントン地下鉄8000系256輌は日立製作所に発注すると発表、日立は8000系を製造するために新たに工場を建設し、最大400人を雇用し地域における新たな雇用を創出する。とし、海外では英国や欧州大陸で存在感が大きい日立だが、アメリカの首都ワシントンでのデビューを機に、北米での存在感も徐々に高めていくことになる。

日立製完成予想

いずれにせよ、川重、日立で「ものづくりJAPAN」チームで頑張ってほしい。

横G について

長年・川崎重工に勤務し、退職後は年金受給者です。このサイトは川崎重工の最新ニュースをわかる範囲で掲載しております。
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